Laravel 13のAI SDKとLaravel Boostとは?Codexと組み合わせたAI開発環境の整理
Laravel 13では、AI関連の機能がかなり前面に出てきました。特に重要なのは、Laravelアプリ自体にAI機能を組み込むための Laravel AI SDK と、CodexなどのAIコーディングエージェントにLaravel開発を手伝わせるための Laravel Boost です。
名前だけ見ると似ていますが、役割はかなり違います。この記事では、Codex + Laravel 13 で開発する場合に、Laravel AI SDKとLaravel Boostが何をしてくれるのかを整理します。
結論:AI SDKとBoostは別物
Laravel AI SDK
→ LaravelアプリにAI機能を組み込むためのもの
Laravel Boost
→ AIコーディングエージェントにLaravel開発を手伝わせるためのもの
Codex
→ コード生成・編集・テスト実行などを行うAI開発エージェント
AI SDKはアプリ利用者向けのAI機能を作るためのものです。一方、Boostは開発者向けのAI支援環境です。
Laravel 13で何が変わったのか
Laravel 13では、ファーストパーティのLaravel AI SDKが導入されました。これにより、OpenAI、Anthropic、GeminiなどのAIプロバイダーを、Laravelらしい統一的なAPIで扱えるようになっています。
また、Laravel Boostにより、Codex、Claude Code、Cursor、Gemini CLIなどのAIエージェントが、Laravelプロジェクトの情報や公式ドキュメントを参照しながらコードを書きやすくなりました。
Laravel 13を新規に使う場合は、PHP 8.3以上が必要です。今回はPHP 8.4で環境を作る前提にしています。
全体像
開発者
↓
Codex
↓
Laravel Boost
↓
Laravelプロジェクトの情報・DBスキーマ・ログ・Laravel公式ドキュメント
一方で、
Laravelアプリ
↓
Laravel AI SDK
↓
OpenAI / Anthropic / Gemini などのAIプロバイダー
Laravel Boostは、Codexに「このLaravelプロジェクトはこういう構成です」と教える役割です。Laravel AI SDKは、LaravelアプリからAIモデルを呼び出す役割です。
Laravel Boostとは
Laravel Boostは、AIコーディングエージェントがLaravelのベストプラクティスに沿ってコードを書けるようにするための開発支援ツールです。
たとえばCodexに、以下のような作業を頼むとします。
Laravel 13でリアルタイムチャット機能を作ってください。
BoostなしでもCodexはコードを書けます。しかし、BoostがあるとCodexは以下の情報を確認しながら作業できます。
- Laravelのバージョン
- PHPのバージョン
- インストール済みパッケージ
- DB接続情報
- DBスキーマ
- Laravelのログ
- 直近のエラー
- Laravel公式ドキュメント
つまり、BoostはAIに対して「このプロジェクトの文脈」を渡すための仕組みです。
Laravel Boostで使える主なMCPツール
Laravel BoostをCodexに連携すると、以下のようなMCPツールが使えるようになります。
application-info:LaravelやPHPのバージョン、パッケージ情報を確認するdatabase-connections:DB接続情報を確認するdatabase-schema:テーブルやカラム構造を確認するdatabase-query:DBにクエリを実行するread-log-entries:ログを読むlast-error:直近エラーを確認するsearch-docs:Laravel公式ドキュメントを検索するbrowser-logs:ブラウザログを読むget-absolute-url:相対URLから絶対URLを作る
これにより、Codexが「推測だけでコードを書く」状態から、「プロジェクトの実情を見てコードを書く」状態になります。
Laravel Boostのインストール
Laravelプロジェクトの中で実行します。
composer require laravel/boost --dev
php artisan boost:install
--dev が付いている通り、Boostは基本的に開発環境用のツールです。
php artisan boost:install を実行すると、どのAIエージェント向けに設定するか聞かれます。Codexを使う場合は、AI agentsの選択で Codex を選びます。
Which AI agents would you like to configure?
□ Amp
□ Claude Code
☑ Codex
□ Cursor
□ Gemini CLI
□ GitHub Copilot
...
インストール後、Codex側で以下を実行するとMCPの登録状況を確認できます。
/mcp
以下のように laravel-boost が表示されれば成功です。
laravel-boost
Command: php artisan boost:mcp
Tools: application-info, database-schema, search-docs, read-log-entries, ...
CodexとBoostを組み合わせると何が嬉しいのか
通常のAIコーディングでは、AIがプロジェクトの実態を知らないままコードを書くことがあります。その結果、存在しないカラム名を使ったり、古いLaravelの書き方をしたり、DB構造と合わないModelを書いたりすることがあります。
Boostを使うと、CodexがLaravelプロジェクトの状態を確認できます。たとえば、PHP 8.4、Laravel 13.11.1、MySQL、インストール済みパッケージなどを見た上で実装できます。
BoostはアプリにAI機能を入れるものではない
Laravel Boostを入れても、アプリ利用者向けのAIチャットボットが自動で作られるわけではありません。Boostは、あくまで開発支援です。
Boost
→ 開発者がCodexなどでLaravel開発しやすくなる
AI SDK
→ LaravelアプリにAI機能を組み込む
AIチャット、文章要約、画像生成、音声文字起こし、ベクトル検索などをアプリに入れたい場合は、Laravel AI SDKを使います。
Laravel AI SDKとは
Laravel AI SDKは、LaravelアプリからAIプロバイダーを扱うための公式SDKです。対応する機能は幅広く、たとえば以下のようなものがあります。
- テキスト生成
- AIエージェント
- ツール呼び出し
- 構造化出力
- 画像生成
- 音声合成
- 音声文字起こし
- 埋め込みベクトル
- ベクトルストア連携
- リランキング
- ストリーミング
- キュー連携
- テスト支援
Laravelらしい書き方でAI機能を扱えるのが特徴です。
Laravel AI SDKのインストール
AI SDKは以下でインストールします。
composer require laravel/ai
次に設定ファイルとマイグレーションを公開します。
php artisan vendor:publish --provider="Laravel\Ai\AiServiceProvider"
最後にマイグレーションを実行します。
php artisan migrate
このマイグレーションにより、AI SDKが会話履歴を保存するためのテーブルが作成されます。
AIプロバイダーのAPIキー設定
利用するAIプロバイダーに応じて、.env にAPIキーを設定します。
OPENAI_API_KEY=
ANTHROPIC_API_KEY=
GEMINI_API_KEY=
GROQ_API_KEY=
MISTRAL_API_KEY=
DEEPSEEK_API_KEY=
OPENROUTER_API_KEY=
すべて設定する必要はありません。使うプロバイダーのキーだけ設定します。
AI SDKでエージェントを作る
AI SDKでは、AI処理の単位として「Agent」を作れます。
php artisan make:agent ChatAssistant
構造化出力を使いたい場合は、以下のように作れます。
php artisan make:agent ChatAssistant --structured
Agentは、AIへの指示、会話コンテキスト、ツール、出力形式などをまとめるクラスです。イメージとしては、Laravelアプリ内に置く「専門AI担当クラス」です。
AI SDKの利用イメージ
たとえば、チャット内容を要約するAIエージェントを作った場合、以下のような使い方になります。
<?php
use App\Ai\Agents\ChatSummaryAgent;
$response = ChatSummaryAgent::make()
->prompt('このチャットログを3行で要約してください。');
return (string) $response;
このように、LaravelのコードからAIを呼び出せます。
リアルタイムチャットにAI SDKを組み込むなら
今回作ったLaravel ReverbのリアルタイムチャットにAI SDKを足すなら、以下のような機能が考えられます。
- チャット内容の自動要約
- 不適切な投稿の検出
- AI Botの自動返信
- 質問に対して過去ログから回答
- 会話タイトルの自動生成
- 投稿内容の感情分析
- チャットログのベクトル検索
たとえば、メッセージ投稿時にAIで不適切表現を判定する場合は、以下のような流れになります。
ユーザーが投稿
↓
Laravelでバリデーション
↓
AI SDKで内容チェック
↓
問題なければmessagesテーブルに保存
↓
MessageCreatedイベントをbroadcast
↓
Reverbで他ブラウザへ配信
MCPとは何か
Laravel Boostの話でよく出てくるのがMCPです。MCPはModel Context Protocolの略で、AIクライアントが外部ツールやアプリケーションとやり取りするための仕組みです。
Laravel Boostの場合、CodexはMCPを通じてLaravelアプリの情報を読みます。
Codex
↓
MCP
↓
Laravel Boost
↓
Laravelアプリの情報、DBスキーマ、ログ、ドキュメント検索
Laravel MCPという別パッケージもあり、こちらは自分のLaravelアプリをMCPサーバーとして公開するためのものです。Boostは「開発支援用のMCP」、Laravel MCPは「自分のアプリにMCPサーバーを作るための仕組み」と考えると分かりやすいです。
Laravel BoostとLaravel MCPの違い
| 項目 | Laravel Boost | Laravel MCP |
|---|---|---|
| 主な目的 | AIにLaravel開発を手伝わせる | LaravelアプリをMCPサーバー化する |
| 利用者 | 開発者 | AIクライアントや外部ツール |
| 使いどころ | Codex、Cursor、Claude Codeなどで開発支援 | 自分のアプリにツール、リソース、プロンプトを公開 |
| 例 | DBスキーマを見てControllerを作る | 社内システムの検索ツールをAIに公開する |
Codex + Boostで実際に頼めること
今回のようなLaravelプロジェクトでは、Codexに以下のように依頼できます。
Laravel BoostのMCPを使って、このLaravel 13アプリにミニチャット機能を作ってください。
要件:
- messagesテーブルを作る
- Messageモデルを作る
- /messages で投稿一覧を表示する
- フォームから投稿できる
- body は required max:1000
- Bladeでシンプルに作る
- 実装前に計画を説明する
- 実装後に php artisan test を実行する
- Laravel Boostの application-info、database-schema、search-docs を使って進める
また、リアルタイム化なら以下のように頼めます。
Laravel BoostのMCPを使って、既存のミニチャット機能をLaravel Reverbでリアルタイム化してください。
要件:
- MessageCreatedイベントを作る
- ShouldBroadcastNowで即時broadcastする
- Echoでmessagesチャンネルを購読する
- 受信したメッセージをDOMに追加する
- 送信者の二重表示を避ける
- npm run buildとphp artisan testを実行する
ポイントは、単に「作って」と言うのではなく、使ってほしいBoostツールや確認してほしいことも明示することです。
Codex利用時の注意点
Codexに作業させるときは、便利な反面、確認も必要です。特に以下の操作は注意して承認した方が良いです。
sudorm -rfchmod -Rchown -Rcomposer updatenpm updatephp artisan migrate:freshDROP TABLETRUNCATE
一方で、以下のような読み取り・確認系は比較的安全です。
sedcatlsfindrgphp artisan route:listphp artisan test
BoostとAI SDKを両方使う開発イメージ
開発時:
Codex + Laravel Boost
→ AIにLaravelのコードを書いてもらう
アプリ実行時:
Laravel AI SDK
→ LaravelアプリからAIモデルを呼び出す
Boostは開発中に効きます。AI SDKはアプリが動いているときに効きます。同じAI関連でも、使われるタイミングが違います。
今回のリアルタイムチャットでの発展例
1. AI Botをチャットに参加させる
ユーザー投稿
↓
AI SDKで返信を生成
↓
AIの返信をmessagesテーブルに保存
↓
Reverbで全員に配信
2. チャットログを要約する
直近100件のメッセージを取得
↓
AI SDKで要約
↓
summariesテーブルに保存
3. 過去ログ検索をAI化する
メッセージ投稿
↓
AI SDKでembedding生成
↓
ベクトルDBや検索用テーブルに保存
↓
質問に近い過去ログを検索
↓
AIが回答
AI SDK導入時の注意点
- APIキーを絶対にGitに入れない
- API利用料金が発生する
- ユーザー入力をそのままAIに渡す場合は内容に注意する
- AIの出力を信用しすぎない
- 個人情報や機密情報をAIに送る場合はルールを決める
- レスポンスが遅い処理はキュー化を検討する
特に、チャットログをAIに送る場合は、個人情報や社内情報が含まれる可能性があります。学習用サンプルでは問題になりにくいですが、実サービスでは設計段階で注意が必要です。
Laravel 13でAI開発を始めるならどちらから触るべきか
個人的には、まずLaravel Boostから触るのが良いと思います。理由は、Boostは既存のLaravel開発を便利にするものなので、すぐ効果を感じやすいからです。
おすすめの順番は以下です。
- Laravel 13プロジェクトを作る
- Laravel Boostを入れる
- CodexからBoost MCPを使って簡単な機能を作る
- テストが通るところまで確認する
- Laravel AI SDKを入れてアプリ内AI機能を試す
最初からAI SDKで本格的なエージェントを作ろうとすると、APIキー、料金、プロンプト設計、ツール設計、キュー、DB保存などが絡んできます。まずはBoostで「AIにLaravel開発を手伝わせる」体験をしてから、AI SDKに進む方が理解しやすいです。
まとめ
Laravel Boost
→ CodexなどのAIエージェントにLaravel開発を手伝わせるもの
Laravel AI SDK
→ Laravelアプリ自体にAI機能を組み込むもの
Codex + Laravel Boostを使うと、AIがLaravelプロジェクトのバージョン、DBスキーマ、ログ、公式ドキュメントを確認しながらコードを書けます。
Laravel AI SDKを使うと、LaravelアプリからOpenAI、Anthropic、Geminiなどを統一的に扱い、AI Bot、要約、画像生成、音声処理、ベクトル検索などを実装できます。
今回のようにLaravel 13でリアルタイムチャットを作った後なら、次の発展としてAI SDKを組み込むのはかなり面白いと思います。まずはBoostで開発体験を良くし、その後AI SDKでアプリ機能を拡張していくのが現実的です。
